素敵な複合機
大学を卒業後に公認会計士の資格を取得し、国際会計事務所のKPMG日本法人に就職した。
外資系金融機関の監査やコンサルティング、M&Aの際のデュ−デリジエンス(資産評価)などの業務を行っていたが、「事業会社に飛び込んで自分が中心になって活躍してみたい」という気持ちが高まり、二OOO年三月、GMOに飛び込んだ。
何と最初は、アルバイトの待遇だったという。
KPMGを退職された理由は何だったのでしょう。
もともと公認会計士を志した時点で、一生会計事務所に在籍するつもりはありませんでした。
いずれは独立したいと考えていたんです。
退職した直接的なきっかけは、知人がGMOで働いていて、「面白いからうちに来た方がいいよ」と誘われたことですね。
私自身も会計事務所という静的な仕事をしていて、今度は事業会社で働いてみたい、ダイナミックなところに関わっていきたいという欲求を強く感じていました。
だから代表に会いに行ったのですが、経営者としての生命力とかエネルギーを強く感じ、そして代表の壮大なビジョンにも感銘を受けました。
そうしたビジョンに自分も関われたら、すごく面白いだろうなあと感じたんですね。
会社を作り上げていくことに自分も参加して、そしてみずからの力で何かを成し遂げてみたいと思って、それで反射的にGMOに飛び込んだんです。
GMOに転職するに当たって、自分のどのような能力を武器にできると考えたのですか。
当時、GMOではグループ企業の上場やM&Aなど、資本を使ったダイナミックな展開を進めていました。
そうした戦略であれば、会計事務所で働いていた私のバックグラウンドでも活躍の機会があるかなと思いました。
最初はアルバイトだったんですね。
代表と面談した翌日から、とりあえずグループ会社のまぐクリックに通い始めました。
上場の準備を手伝うことにしたんです。
この段階ではまだKPMGを辞めていなかったので、会社が夕方に終わってから、渋谷に行って時給千円でアルバイトとして深夜まで働いてました。
たいへんな日々ですね。
それはもうたいへんでしたが、それ以上に仕事のダイナミックさに魅了されました。
私がまぐクリックに手伝いに行ったのは二OOO年三月のことなんですが、九九年に設立された会社がもう上場準備をしているというそのスピードには、今までにないことが起きているという興奮がありました。
本能的に「この会社に関わっていきたい」と思うようになったんです。
それで一か月後にKPMGを退職し、正社員としてGMOに正式に入社しました。
仕事のおもしろさはKPMG以上だったということでしょうか。
自分のアウトプットがどんどん形になっていくところに、ダイナミックさを感じました。
会計事務所というのは、人のやったことに対する後追的な仕事なんですね。
自分が中心になって何かを作っていくというダイナミックさとは無縁の仕事で、熱くなれないんです。
もちろんプロフェッショナルだから仕事はきっちりとこなすのですが、常に離れたところから客観的に物事を見ているという仕事なんです。
KPMGからGMOに行って、文化的なギャップは感じませんでしたか。
企業文化は全然違っていました。
外資系の会計事務所であるKPMGは、個人個人が自分の能力を発揮してプレイヤーとして仕事をしていくというスタイルだったのに対し、GMOは会社のビジョンを共有するため、「スピリットベンチャー宣言」をみんなで唱和するなど、組織力を大事にしている会社だなと思いました。
それとGMOは若い会社ではあるけれども、社員のみんなが礼儀正しく、挨拶もしっかりするなというのが意外な驚きでした。
GMOでの最初の仕事は。
入社して、管理本部経理財務チ−ムのスタッフになりました。
それで最初は海外のグローバルオファリングなどファイナンス業務に取り組みました。
その後、GMOが二OO一年からM&Aにかなり力を入れるようになり、その仕事に立候補して取り組むようになりました。
M&Aに関してはスピードが必要で、トップの意思決定に近いところになければスピードが阻害されるということになり、社長直属の経営戦略室を設置することが決まって、その責任者である室長に就任しました。
そして二OO二年三月に取締役に進み、O三年四月に常務、O五年四月からは専務を務めています。
現在は専務取締役として管理部門を統括しています。
M&Aでは、どんな案件が印象に残っていらっしゃいますか。
GMOでは、実はM&Aという言葉をあまり使っていないんです。
M&Aというとどうも会社を売ったり買ったりするイメージが強くなってしまうので、GMOはグループの志を大事にしたいという気持ちがあり、仲間を得るためのM&Aということで、資本提携という言葉を主に用いています。
その中で印象に残っているのは、株式会社A(現GMOホスティングアンドテクノロジーズ株式会社)との資本提携ですね。
当時商法が改正されて株式交換による合併が認められた直後で、われわれにとっては、株式交換を使った第一号事例となりました。
もともとレンタルサーバー業務を手がけていたAはGMOのコンペティタ−で、「打倒GMO」と言っていたわけです。
それがGMOの資本が入るというので、Aの社内には相当動揺がありました。
そんなある日、AのA社長から「会社が揺れているので、説明に来てくれないか」と言われて、当時市ヶ谷にあったAの本社に真夜中に出かけ、集まっていた幹部のみなさんに一生懸命資本提携の意義を説明したこともありました。
結果的にはA社長ら幹部がうまく橋渡しをして社内をまとめてもらうことができ、M&Aはうまくいきました。
AはGMOホスティングアンドテクノロジーズとなった今もなお、たいへんな利益を出しています。
単なる資本の手続きだけでなく、人をまとめていくことがM&A成功の力ギなんですね。
紙の上の取引が終わればM&Aは完了するのですが、実はいちばん大事なのはアフターM&Aなんです。
グループに仲間を増やして、そこをきちんとケアしていかなければならない。
そんなふうにして私はM&Aに取り組んできたんですが、そうやってM&A先の企業とつきあっているうちに、気がつけば私自身がグループ企業のハブというか、橋渡し役になっていました。
それでグループの管理を全般にまとめていく仕事を担うようになっていったんです。
経営メンバーとして、意思決定はどのように行っているのですか。
代表に言われたから、やるわけではありません。
代表のために仕事をするのではなく、何が正しいのか、何をやるべきなのか、どう意思決定するのか、ステークホルダーにとってどの意思決定が正しいのかを考えながら、仕事を進めていっています。
もちろん指揮命令系統のトップに代表はいるのですが、たとえば代表の下にいる営業担当の経営メンバーは数字を報告しているだけで、細かい意思決定は経営メンバーで自由に行える仕組みができていますね。
またカネを動かす話になれば当然役員会に諮られることになるのですが、代表がイエスになったからイエスになるとは限らないし、たとえば専務である私がノーといったために実行されない案件、だってあるわけです。
GMOはワンマン会社ではないですからね。
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